前回Vol.1では、用賀アーバンクリニック理事長の野間口聡医師に、同院のコンセプトを立案した際の経緯や込められた思いを伺いました。Vol.2となる今回は、院長の田中勝巳医師、事務長の越路公雄さんにも参加いただきます。

座談会のテーマは《運営体制》。ファシリテーターは株式会社メディヴァの岩崎克治さんです。用賀アーバンクリニックは、運営体制において2つの特徴をもっています。1つは、外部(株式会社メディヴァ)に経営支援を依頼していること。もう1つは、歴代の事務長をはじめ経営スタッフの多くが医療業界未経験者であることです。

「本当にもう、素人で困ったなあって感じで」

これまでの歩みをふり返る野間口医師の、柔らかい笑顔が印象的でした。

医者とビジネスマンでハッピーにまわっている

画像: 用賀アーバンクリニックにて。(左から)事務長の越路公雄さん。院長の田中勝巳先生。理事長の野間口聡先生。株式会社メディヴァの岩崎克治さん。

用賀アーバンクリニックにて。(左から)事務長の越路公雄さん。院長の田中勝巳先生。理事長の野間口聡先生。株式会社メディヴァの岩崎克治さん。

岩崎克治(以下、岩崎):
前回は、当時マッキンゼーをやめたばかりだった大石さん(株式会社メディヴァ 代表)と小松さん(同社 取締役)を経営コンサルタントに、用賀アーバンクリニックを開院した際のエピソードを伺いました。それから16年、順調な経営を維持できているこのクリニックの運営体制についてお聞かせください。

田中勝巳医師(以下、田中):
僕は開業3年目の2003年に入職しました。2011年に院長になりましたが、運営に関しては、常に事務長さんや、コンサルタントであるメディヴァの方々との二人三脚で成り立ってきたと感じます。

画像: 田中勝巳 | Katsumi TANAKA 用賀アーバンクリニック院長。総合内科専門医、循環器専門医、介護支援専門員。僻地診療所に5年間勤務後、「家庭医」を目指し用賀アーバンクリニックに参画。小さな赤ちゃんからお年寄りまで「家庭医」の機能を担う。 www.yoga-urban.jp

田中勝巳 | Katsumi TANAKA
用賀アーバンクリニック院長。総合内科専門医、循環器専門医、介護支援専門員。僻地診療所に5年間勤務後、「家庭医」を目指し用賀アーバンクリニックに参画。小さな赤ちゃんからお年寄りまで「家庭医」の機能を担う。

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野間口聡医師(以下、野間口):
メディヴァと組んだのは大きかった。なにがって、そのおかげで僕らは医者として医療に集中できているわけです。世の中を見渡せば、医者と経営のプロが組んでこれほどハッピーに回っているのは稀有な例でしょう。

岩崎:
それが実現できているのはなぜだと思われますか?

野間口:
理由としてまず浮かぶのは、医療と経営、双方の上の人間同士が信頼関係を築けていること。大石さんとも田中先生とも喧嘩をしない。ダメになる時というのは、上の人間同士が途中で仲たがいしてしまっているケースが多いように感じられます。

岩崎:
それはありますね。では、信頼関係を築く上で大切なことは何でしょうか?

野間口:
医療現場に限った話ではありませんが、お世辞とかではなく本気で良いと思えるコンセプトがあり、なおかつ、それを共有できていることかな。同じ思いで、同じものに向かっているというのは、信頼関係のベースになります。これがなければ、時間の経過とともに考えや行動にばらつきが生まれて、関係性を保てなくなるのも無理はない。

実績を積み重ねるしかないな、と思って今に至ります

画像: 野間口聡 | Satoshi NOMAGUCHI 用賀アーバンクリニック理事長。医学博士、脳神経外科専門医。鹿児島大学卒業後、1997年に医局を離れるまで、脳外科医としてキャリアを積む。2000年より、用賀アーバンクリニック設立に携わる。 www.yoga-urban.jp

野間口聡 | Satoshi NOMAGUCHI
用賀アーバンクリニック理事長。医学博士、脳神経外科専門医。鹿児島大学卒業後、1997年に医局を離れるまで、脳外科医としてキャリアを積む。2000年より、用賀アーバンクリニック設立に携わる。

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岩崎:
なるほど。この経営体制は、2000年当時の医療業界の“普通”とは違いますよね?加えて先進的なコンセプト(前回記事参照)を掲げたクリニックの開院となれば、風当たりを強く感じることもあったのではないでしょうか?

野間口:
なかったとは言えません。開院にあたって僕と遠矢先生(医師。現・桜新町アーバンクリニック院長)で、近隣にあるほとんどすべての医療機関へ、菓子折をもってご挨拶に伺いましたが、総じて歓迎されている雰囲気ではありませんでした。

岩崎:
具体的になにか言われたのでしょうか?それとも、よそよそしいムードだったという意味でしょうか?

野間口:
ムードもですし、言われるに近い経験もしました。昔からこの地域で診療を続けてこられた医療機関の方々の中には、「用賀に縁もゆかりもなかった人間が、会社組織で大規模クリニックをはじめるらしい」「周辺医療機関のパイを奪おうとしている」と認識された方もいたようです。理解されにくいことはある程度は覚悟していました。とはいえふざけた気持ちではじめたんじゃないと分かっていただくには、まじめに診療を続けて患者様の役に立つという実績を積み重ねるしかないな、と。そう思って今に至ります。

岩崎:
忍耐のときでしたね。

野間口:
そうですね。とはいえ、そんなに大人しくしていた訳でもなく、今思えば「まあ、やらかしちゃってたかね」と思えることがないとはいえない・・・。

一同:笑

医療現場の運営スタッフに求める素養とは

画像: 岩崎克治|Katsuji IWASAKI 株式会社メディヴァ取締役。大阪大学基礎工学部大学院修了。分散アルゴリズム論を専攻。マッキンゼー・アンド・カンパニーのコンサルタントを経て(株)インクス入社。新規事業の立上げ、パイロット工場の工場長、クライアント企業の製品開発プロセス改革に携わったのち、2002年㈱メディヴァに参画。 mediva.co.jp

岩崎克治|Katsuji IWASAKI
株式会社メディヴァ取締役。大阪大学基礎工学部大学院修了。分散アルゴリズム論を専攻。マッキンゼー・アンド・カンパニーのコンサルタントを経て(株)インクス入社。新規事業の立上げ、パイロット工場の工場長、クライアント企業の製品開発プロセス改革に携わったのち、2002年㈱メディヴァに参画。

mediva.co.jp

岩崎:
田中先生は、このクリニックの運営体制をどうご覧になっていますか?

田中:
特徴的だと感じるのは、個性豊かな歴代の事務長さんたちの活躍です。彼らの個性というか、力というのが非常に大きく、今の用賀アーバンクリニックに欠かせない要素だと思います。本当にみなさん個性的で、一般的に想像する事務長さんとはイメージがちがう。その理由といえるかわかりませんが、歴代の事務長さんたちはみんな医療以外の業界の出身者なんですね。

野間口:
あれはわざと?笑

岩崎:
結果としてそうなったということですね。採用を担当しているほうとしては、医療の経験もあって、他の要素も備えていてという人がいればよかったのですが、外せないと思う部分で選んでいくと、あの時点では未経験者に入ってもらうほかに選択肢がなかったようにも思えます。

野間口:
採用の決め手とか基準はあった?

岩崎:
前提として、2000年当時の医療業界は、今以上に「変化」に消極的だったように思えます。その時代に設立まもない会社の「医療界に変革を」という理念に賛同し、飛び込んできてくれる人というのは、医療界出身者には少なかったんじゃないのかなと。求める素養としては、新しいことに取り組むマインドや、考える能力、対人面や組織スキルも高くて、といった感じですかね。でも、それら全部が100点というような方はなかなかいません。

野間口:
医療業界の経験以上に、必要な素養があったと。

田中:
たしかに、このクリニックの事務長はそういったポテンシャルがある方々でないと務まらないように思います。それくらい大変です。みなさんご苦労なさったと思いますが、どの方もそれぞれの経験や知見を活かしてさらにここで経験を積んで、成長していかれるんですよ。医療業界を知らないなりに、どの方も精いっぱいこのクリニックを盛り上げてくださった。おかげで僕らは診療・医療に専念できて、おかげで今の用賀アーバンクリニックがあると。

こうしてふり返ってみると、未経験者だったことがよかったんですかね?

岩崎:
よかったかどうかはわからないのですが。

野間口:
いやまあ、最初は本当に素人で困ったねえって感じでしたよ。笑

岩崎:
そうですよね。笑

野間口:
とはいえ大石さんや小松さんだって、最初はクリニック経営の素人でしたからね。だからほら、僕は言ってるんですよ。「最近じゃ、小松さんも偉くなったね、本まで出してね」って。

一同:笑

※小松大介さんの書籍についてはこちらをご覧ください。(編集部)

クリニックの歴史に根づいた何かだと感じることがある

画像: 越路公雄 | Kimio KOSHIJI 用賀アーバンクリニック事務長。東京大学経済学部卒業後、株式会社オースビーにてコンピュータプログラム開発・システム要件定義を経験。顧客企業IT部門の業務効率化や品質改善、メンバーマネジメントに携わる。当事者意識をもち医療機関の課題を解決していく姿勢に共感し現職に。大学時代は、応援部一色の生活だった。 mediva.co.jp

越路公雄 | Kimio KOSHIJI
用賀アーバンクリニック事務長。東京大学経済学部卒業後、株式会社オースビーにてコンピュータプログラム開発・システム要件定義を経験。顧客企業IT部門の業務効率化や品質改善、メンバーマネジメントに携わる。当事者意識をもち医療機関の課題を解決していく姿勢に共感し現職に。大学時代は、応援部一色の生活だった。

mediva.co.jp

岩崎:
このクリニックの事務長は、ポテンシャルがないと務まらない。内部的には共通の認識かもしれませんが、その背景をもう少しご説明いただけますか?

野間口:
おおもとの話をすると、ここは「自分たちが受けてみたい医療を提供する場」です。コンセプトに共感した人間の集まりなので、コンセプト実現のために個々人が出せる最大のパフォーマンスを要求されます。単に利益を出せばいいという場ではない。その点で、事務長さんたちは世間一般の事務長さんたち以上に、多くを求められるキツい現場かもしれません。丁稚奉公みたいな。

越路公雄:
丁稚奉公ですか?!

一同:笑

岩崎:
越路さん、事務長として現場で実感されることはありますか?

越路:
常日頃からスタッフ同士でここの歴史をふり返り語りあう、といったことはしません。それでも職種に関わらず、仕事をする中で一人ひとりが発しているものがあり、それがこのクリニックの歴史に根づいた何かだと感じることがあります。それは新しく入職した人にも、一緒に働く中で感じとれるものだと思います。個々が高いハードルを感じながら取り組んでいるともいえます。

力をひきだされる環境、エネルギーを吸収される場

野間口:
このクリニックがね、我々のエネルギーを吸いとるんですよ。

岩崎:
「吸いとる」とおっしゃいましたか?!笑

野間口:
そうそう(笑)、クリニックが僕らの力を吸収して大きくなるイメージ。クリニックのコンセプトとか、これまでの積み重ねてきたことがあるから、用賀アーバンの看板に患者さんたちが期待するものがある。それだけのパフォーマンスを求められる場なんです。そういう場であるから、そのときどきに在籍する人たちが力を尽くして最高のパフォーマンスを発揮して、クリニックがまたひとまわり成長する。この積み重ねです。だからね、僕らはね、非常に疲れるんですよ。笑

岩崎:
そういう意味ですか。「吸収される」「疲れる」というとネガティブにも聞こえます。でも、力を引き出されるという意味が大きいように思えます。用賀アーバンクリニックの核としてまずコンセプトがあり、それに賛同するメンバーが、個々の最大の力を発揮する。これが、ハッピーな経営・運営を持続する上で重要だと言ってよいでしょうか?

野間口:
そうですね。皆で同じものに向かっているから、発揮される力の方向が揃うという面も大きいでしょうしね。はたからみたら、あるいは入職したての職員さんだと、もしかしたら最初は理解しにくいかもしれません。でもここにいる医師や職員がそういう意識でいることを、日々の診療の積み重ねから理解して、あるいは知ってもらえたらうれしいですね。すると僕らは、そのためにまた地道に取り組んでいくわけで・・・。ほら、ね? エネルギーを吸いとられてる。つまり、そういうことなんですよ。笑

画像: 用賀アーバンクリニック 東急田園都市線用賀駅より2分 東京都世田谷区用賀2-41-17 1F・2F www.yoga-urban.jp

用賀アーバンクリニック
東急田園都市線用賀駅より2分
東京都世田谷区用賀2-41-17 1F・2F

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インタビュー:岩崎克治、構成:塚田史香
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