神奈川県横浜市青葉区では、医師会などの地域医療機関と在宅医療クリニック、ケアマネジャー等医療関係者が連携して、地域のケアの力を高めていく取り組みが広がっています。5月より4回にわたって行われたケアマネジャー向け医療連携セミナー。

最終回の第4回は、在宅医療の摂食嚥下評価と胃瘻についてです。

目次

 摂食嚥下評価について(小林医師)
1.嚥下障害の原因と症状
2.嚥下障害のテストと検査について
3.在宅での注意点と誤嚥対策
4.リハビリ方法と上手な薬の飲ませ方

 胃瘻について(鳴海医師)
1.胃瘻の歴史と現状
2.どういう時に胃瘻をつくるのか
3.胃瘻をつくるにあたって大切なこと
4.合併症を回避する工夫
5.カテーテルが抜けてしまったら

▼過去のレポートはこちらよりご覧ください。
第1回 予後予測の知識 高齢者の予後予測と終末期の変化、報連相のポイント
第2回 褥瘡の早期発見、早期治療のコツ
第3回 在宅医療の栄養学

摂食嚥下評価について(小林晶子医師)

みなさんこんにちは。今日は5月から行ってきたセミナーの最終回となります。内容はまず、私、小林から摂食嚥下評価についてお話させていただいた後、後半は鳴海医師から胃瘻を取り上げていただく予定です。どうぞよろしくお願いいたします。では早速、摂食嚥下評価について順番にご説明してまいります。

画像: 摂食嚥下評価について(小林晶子医師)

小林 晶子|Akiko KOBAYASHI
東京女子医大を卒業後、東京女子医大病院を経て医療法人社団プラタナスの松原アーバンクリニックに入職。平成27年4月に青葉アーバンクリニック入職。

嚥下障害の原因と症状

嚥下障害は、脳血管障害、脳梗塞、あるいは神経筋疾患、加齢によるサルコペニアというようなものが主な原因であり、そのうち脳梗塞が40%となっています。実は、脳梗塞の内5人に1人は慢性的な嚥下障害になるのですが、4人はリハビリで元に戻るといわれています。一方、パーキンソン病やALSなどの神経筋疾患で嚥下障害になった方はなかなか治すのが難しく、そのまま嚥下障害が進行してしまいます。

次に嚥下障害の症状についてです。よくいわれますけども、むせるということ以外に発熱を繰り返す、声が変わるということがあります。声が変わるというのは特徴的なんですが、夜間、日中の咳痰が増えたり、風邪で声が変わったかなと思われて、風邪薬をくださいと病院に来られたら、実はそれが嚥下障害の症状だったということがあります。また、風邪薬の去痰薬の中には痰をサラサラにしてしまうものがありますので、そうすると誤嚥を逆に起こしやすくなるようなこともあるので注意が必要です。

日常的に嚥下障害があると、一番大変なのは誤嚥性肺炎のリスクが高まるということです。
誤嚥性肺炎は発熱や呼吸苦のほかにも、口の中にものをためて飲み込めなくなったとか、夜間に咳き込んでいるというような、ちょっと元気がない様子の時に念のためレントゲンをとってみると実は肺炎だったということがあります。

そのほかにも胃瘻で経口摂取をしていないんだけども、無意識のうちに唾液が気管に入ってしまうことがありまして、そういうのを不顕性肺炎といいます。通常は誤嚥するとむせるんですけども、こういう方はむせないのでいつのまにか肺炎になっているということがあります。

嚥下評価のテストと検査について

では、在宅で嚥下障害があるかないかを見分けるにはどうしたらいいでしょうか。ここではいくつかあるテストをご紹介したいと思います。まずスクリーニングとして以下の質問紙法、水飲みテスト、反復唾液嚥下テストがあります。

画像1: 嚥下評価のテストと検査について

質問紙法というのは1〜15の項目がありまして、例えば「むせることがありますか?」「声がかすれてきましたか?」「食べるのが遅くなっていますか?」など1から15の質問の中で1つでもAがあれば嚥下機能障害が疑われるというものになっています。それからこちらもよく使われているのが水飲みテストです。

画像2: 嚥下評価のテストと検査について

30mlの常温の水を普段どおり飲んでいただき、1回で飲み切れば正常、2回に分けないと飲めないということであればその時点で嚥下障害があると判断します。ただ、いきなり嚥下障害がある人にこのテストを行って、誤嚥性肺炎になってしまってもいけませんので最近改訂版が出ています。内容としては、3mlの氷水を一回飲んでいただいて、その後に30秒間空嚥下(唾をごっくん)してくださいということになっています。その30秒間で2回の空嚥下ができれば正常、それができなければ嚥下障害を疑います。

最後に、反復唾液嚥下テストがあります。これが一番リスクが少ないやり方で、触診で喉を触っていただいて、できる限り30秒以内に唾をのんでくださいと指示します。ご自身でもやってみていただくと喉頭のところが上にあがるのがわかると思いますが、それを観察して判断します。30秒以内にごっくんと3回できれば正常、2回以下の場合は嚥下障害を疑います。

このようなスクリーニングでやはり嚥下障害が疑われるとなれば、しっかりした検査が必要になります。よくVFとかVTとかいいますが、VFというのは嚥下造影検査で、レントゲンを撮っている中で食事をとっていただいて食物がどのように通過するかというチェックをするものです。どこに食物が残っているかとか、どんな食べ物だったらこの方はうまく飲み込めるかとか、姿勢についても詳しく評価ができます。むせてしまったときも自分で咳をだして、それが喀出できるかという確認までできるので一番詳しい検査です。

この嚥下造影検査は病院に行かないとできませんが、もっと簡単にできる検査がVT検査、いわゆる嚥下内視鏡検査です。歯科医の先生が最近訪問歯科でやっていますが、内視鏡を入れて喉の奥を見る検査です。喉に唾液や食物がたまっているかどうか、喉頭の麻痺がわかるという検査で、環境が整えば在宅診療で先生にお願いすることができます。それ以外にもFILS(フィルス)といって、施設や在宅でできる簡単な摂食レベルの評価指標があります。これは、嚥下障害のレベルを判断する材料として使われているのですが、患者さんの状態を、経口摂取をしている方、経口摂取と代替栄養(胃瘻含む)を併用している方、経口を全くしていない方の3つに分け、その上でさらにそれぞれを3つに細分化して、正常を入れて全部で10段階に障害のレベルを分けます。この指標は、この患者さんが今どれくらい食べているのかということを客観的に評価でき、医療従事者間でコミュニケーションする時にとても役に立ちます。

「最近むせてきた」とか「熱を繰り返している」という患者さんがいる時は、早く嚥下障害の可能性にも目を向けていただき、先ほど紹介したようなスクリーニング手法を用いて適切に障害を評価して対応をしていただくことが大事になります。

在宅での注意点と誤嚥対策

では実際に嚥下障害があった場合にはどのような対応をすればよいでしょうか。嚥下障害があればすぐに胃瘻をするかというと、必ずしもそうではありません。その前にできることがたくさんあるのでいくつがご紹介をしたいと思います。

まずは口腔ケアです。嚥下障害の方はお口の中が汚いと細菌が多く、誤嚥性肺炎の原因になります。そのため徹底して口腔ケアをすることでリスクを軽減することができます。また、食事前に準備体操として嚥下運動をするというのも有用です。それから姿勢も大事です。特に直角で座っていると誤嚥をしやすくなるため、30度から60度リクライニングをしつつ、首だけ前屈にし、枕をあてて固定するのが理想的だと言われています。固定するのはなぜかというと、首が不安定だと誤嚥をしやすいんですね。

食べる速度をゆっくりにするのも大切です。ある施設では、介護スタッフと患者さんが一緒に食事をしているのですが、それはスタッフの食事時間が短縮されるとか、アットホームな雰囲気を出したいとかではなくて、患者さんの食べる速度をゆっくりにする工夫なんです。つまり、介護するだけだとどうしても患者さんのリズムより食べる速度が早くなってしまう。そこで一口差し上げたら自分も食べる、自分も食べてからもう一口差し上げるというふうにして、(交互食べというのですが)理想的なペースで食べてもらうようにしています。それ以外にも1回の食事とか食事のリズムとか一口の量を工夫することが良いといわれています。

それから、一番有効なのが、食事の柔らかさとか飲み込みやすさを変えることです。今、ユニバーサルデザインフードといって、どのくらいの硬さの食品を提供したらよいかという指標ができています。この指標を用いて食品を開発しているメーカーも多くありまして、今日はクリニコさんとキューピーさんから試食できるものをご用意いただきましたが、和風なものから洋風なものまで全部スーパーや通販で買うことができます。こちらを利用しても誤嚥するときは硬さの区分を一段階落としていただくのがよいでしょう。

画像: 在宅での注意点と誤嚥対策

水分に関しても同様に様々な商品があります。「エナチャージ」とか「アイソトニックゼリー」は長いノズルがついていて、喉の奥の方までいれてやると反射が起きて飲みやすくなる構造となっています。これがとても有用で、以前はノズルをくっつける形だったのですが、途中で外れて飲み込んでしまう事故がたくさんあったので、今は一体型のものが使われています。それ以外にも演習用に「らくらくごっくん」とか、コップの先にノズルがついていて押すだけで喉の奥まで入っていくものもあります。

認知症の患者さんもたくさんいらっしゃると思いますが、認知症の方は食べ始めることが困難だったり、食事が途中で止まったり、早食いになったりしますので気をつけなければいけません。工夫としては、まず食べ始めるのが困難というときは最初に甘いものを食べていただくと口に刺激を与えることができて食事が始まるんだとわかったり、いつも同じ箸や食器を使うと、それを見ただけで食事なんだと認識できたりします。

食事が途中で止まってしまうことについては、これも私が訪問している施設の事例を紹介すると、そこにいるAさんという方は、食事中に目の前に人が通るとその人をずーっと見てしまうんですね。そうすると食事が止まってしまうので、その方がごはんを食べている間は絶対に前を通ってはいけないというルールがあったりします。他にも音楽をかけない、テレビは消すなど食事に集中できるような時間と環境を作ってあげるとよいでしょう。また、早食いに関しては、窒息のリスクもあるので、食事を小分けにするよう気をつけていただきたいと思います。

嚥下障害のリハビリ方法

次に身体的なリハビリですが、先ほどあったように食事の前に嚥下準備体操をすると誤嚥のリスクが非常に下がります。やはり高齢者の方は首の筋肉がとても硬くなっています。首が固くて回らないとか、顎の筋肉がすごく固まっているとか、特に神経筋腫やパーキンソンの方にそういう方が多く、首の運動やマッサージをするだけでもかなり誤嚥のリスクが減ります。

それから咳嗽(がいそう)訓練と言って咳をする訓練があります。えへんという咳を一日に何回やると決めて、少しずつ回数を増やしていくというものです。口腔ケアで使っているような綿棒を凍らせてマッサージする方法もあります。あとはろうそくをふーっと吹くような訓練をする口すぼめ呼吸法、ペットボトルにストローを挿し、水を入れてぶくぶくと息を吐くペットボトルブローイングも効果があります。

以上のようにいろいろ対策をしてもやはりむせてしまったら、その時はまず焦らないことです。むせた時にいきなり上を向いたり深呼吸すると余計気道に入っちゃったりしますので、ゆっくり落ち着いて一度口を閉じてからまた開けてもらい、ゆっくり咳をするように促していただくとよいと思います。

上手な薬の飲ませ方

最後に上手な薬の飲ませ方についてご紹介します。皆さんすでに実施されているかと思いますが、ゼリーで薬を飲んでもらうのがお勧めです。食後に飲む場合もありますが、その場合、完全に食後ではなく食中の最後の方から薬と食事を交互に口に入れていくとちゃんと薬が入っていくのでよいと思います。

これは医療的な話ですが、最近は、神経系の鎮静させたり睡眠を促す薬、それからデパスなどの安定剤とか血圧降下剤でも嚥下障害が起きます。あとはアレルギーのお薬で鼻炎の薬なども唾液が減るので飲み込みにくい症状が出てきます。このように患者さんがどんなお薬を飲んでいるかにもちょっと注意していただければと思います。

逆に最近は誤嚥性肺炎に予防効果がある薬剤ということで高血圧のACE阻害薬を使ってほしいと言われることがあります。昔は咳の副作用が懸念されたのですが、むしろ咳が起こって反射を起こしやすく、嚥下障害には効果があります。脳梗塞のプレターゼも同様です。その他よく唐辛子入りの食塩などで使われるカプサイシンも刺激で反射が起きるので効果がある人もいます。

以上をまとめますと、まず誤嚥対策としては口腔ケア、食事の仕方、内容に注意すること。それから体を動かしたり、顎周りの筋肉をほぐしていくということ。原因となる薬剤の減量や中止を検討したり、逆に予防効果がある薬の投与をすることが挙げられます。

最後に、嚥下障害は最近、地域でも一番の対策として注目されています。各種情報サイトが充実しており、エーザイの「摂食・嚥下のメカニズム」や東京都福祉保健局の「食べること、飲むことが心配な方へ」が参考になります。

駆け足になりましたが、このような対策をしたうえでも肺炎を繰り返す、食事がとれないとなってきた場合、胃瘻が選択肢になってきます。ここからは胃瘻について鳴海先生にバトンタッチしたいと思います。

胃瘻の歴史と現状

では、ここからは私から胃瘻に関してのお話をしたいと思います。少し歴史をふりかえると、まず平成21年に、厚生労働省でガイドライン作りのための調査報告がありました。胃瘻をつくった65歳以上の方の経過を見たところ、1年以内の死亡率は30%以下、3年以上の生存率は35%以上と欧米の数字よりもだいぶよい数字が出てきました。そのような経緯から平成22年の段階では、新規に胃瘻を作る方は20万件、胃瘻交換をする方は60万件と多数の方が胃瘻をつくっていました。最終的に平成23年、老年医学会が主体となって、摂食嚥下障害、胃瘻など人工的な造設術の導入決定のためのガイドラインができました。それによって、それまでは胃瘻になるものが多かったのが、本人、あとは家族の方がよく考えるようになって、多少胃瘻をつくる方が減ってきたというのが現状です。

画像: 胃瘻の歴史と現状

鳴海 賢二|Kenji NARUMI
順天堂大学医学部を卒業後、順天堂大学付属順天堂医院および関連病院で勤務。平成28年6月に青葉アーバンクリニック入職。

今日の講演ですが、大きく3つのことをお話してまいります。まず、どういうときに胃瘻をつくるのか。小林先生の講演にもありましたように嚥下機能障害を的確に判断することがポイントになります。2番目にどういう風につくるのか、皆さんあまり胃瘻をご覧になったことがないと思いますので、簡単に図と写真でご説明をしようと思っています。最後に胃瘻をつくった後の合併症についてご説明してまいります。

どういう時に胃瘻をつくるのか

まず、胃瘻は口から食べれなくなった時につくります。口から食べられなくなる原因としては認知症や高度認知症で食事そのものを認識しなくなったり、うつ病でも食欲が無くなってしまうことが一つです。あとは頭頸部の外傷があると、物理的に口の周りが外傷で噛めなかったり飲み込めなかったりします。その他にも悪性腫瘍、特に頭頸部癌とか食道癌や胃癌などで食べれない、なんとか食べられても誤嚥が多くなってしまったり、嚥下機能が落ちてきて肺炎を繰り返すようになると、経口からの食事では誤嚥を繰り返して重篤になってしまうので、それを避けるために胃瘻を作ることになります。二番目は食べると吐いてしまうケースです。これはいわゆる胃癌、大腸癌、癌性腹膜炎などによって腸閉塞の状態となり食べられなくなってしまうケースです。以上のように、口から食べられなくなったときの選択肢にはいろいろありまして、図示すると次のようになっています。

画像: どういう時に胃瘻をつくるのか

いわゆる嚥下機能が低下してくると、本当に食べられないのかどうかをまず判断し、その次に消化できるか、胃瘻や経腸栄養で胃や小腸、要するに消化管にものを入れてもちゃんと吸収してくれるかどうかを判断しなければいけません。それが難しいケースは先ほどお伝えしたように大腸癌や胃癌、腸閉塞になっている状況、あとは消化管の機能が悪く、下痢がひどくて栄養を吸収できないような状況の場合には経静脈栄養になります。

経静脈栄養では短期の場合は末梢静脈栄養、手の点滴、長期化すれば、末梢栄養では長期的に十分なカロリーが難しいため中心静脈栄養になります。一方でなんとか消化管が使えるというような人はいわゆる経腸栄養、腸管栄養という選択肢になります。短期の人の場合は、鼻からの胃管のチューブで十分対応できますが、これが数ヶ月以上と長期化してくる人は、やはりチューブでやるのは難しくなって胃瘻とか腸瘻の選択になると思います。

ただし胃瘻が作れないという人がいます。例えば、顎関節が硬直しちゃって口が開かないと
内視鏡を入れることができません。また、(食べれなくなっているのであまりないケースですが)肝硬変のような場合でお腹に大量の腹水がある場合、肥満でお腹の筋肉、脂肪が厚い人は針が届かずに難しいということになります。それから肝臓が大きい場合。通常は肝臓が右側にあって胃全体を上から覆い隠すことはないのですが、まれに刺せないほど大きな肝臓が胃の前にあるケースもあります。後は胃の中に癌があったり、胃潰瘍があったり、手術をして胃をとってしまった人はもちろん、3分の1くらい残っていたとしてもなかなかつくることはできません。それからヘルニアがあって胃が胸腔内に持ち上がっているような人、出血傾向がある、予後が不良の場合も胃瘻を作ることはできません。

胃瘻をつくるにあたって大切なこと

実際に胃瘻は大きく2つあり、お腹を実際に切って胃瘻を引っ張りあげて腹壁に固定する開腹胃瘻とよくPercutaneous Endoscopic Gastrostomyの頭文字をとってPEGと言われていますが内視鏡をつかった胃瘻造設術に分かれます。

実際のイメージとしては、胃と腹壁をチューブで引っ張りあげて、そこに最終的にトンネル(瘻孔)をつくり、そこからチューブを胃の中に入れるというような手術になります。
この手術をする前に確認することとして、まず一つは手術に耐えられるか。全身状態が悪くないかどうかということ。先ほども言いました通り1ヶ月以上の生存が認められるかどうかという判断があります。それから二番目として、これが一番大事ですが、ご本人の意思、もしくはご家族の気持ちです。ご家族も何人かいらっしゃると意見が割れてまとまることは難しいこともあります。胃瘻を作った後に、合併症もなくてうまくいくとそんなに不満も出ないかもしれませんが、やはり色んな合併症が起こってしまうとご家族の中でも揉めたりすることもあるので、ご家族の気持ちとか意見の統一が必要になってくるかなと思います。三番目は合併症のリスクです。一応局所麻酔と簡単な咽頭麻酔が必要になりますが、胃瘻の手術自体は10分から15分、長くても30分くらいで終わり、そんなに難しいものではありません。ただし、やはり全身状態が悪い方を対象としますので、いろんな合併症が起きると亡くなる可能性があることは事前にしっかりと確認しておかねばなりません。

合併症を回避する工夫

それでは合併症を回避する工夫についてお話しします。まずは胃瘻を作ったときに起こるものと、作ってから1ヶ月以内、それ以降のものとでそれぞれ合併症の種類、対策が違ってまいります。まず、作るときに起こるものですが、腹壁から刺す際に臓器が挟まっていたり、
横行結腸を貫いたり、肝臓を刺したりしてしまうと出血の原因となります。あとは胃の壁から出血すると胃の中に出血が起きます。また、鎮静剤の副作用で無呼吸になったり、内視鏡を入れている間に誤嚥したり、チューブを口から通す時にチューブで食道を傷つけてしまうことがあります。

作ってから1ヶ月以内に一番怖いのは自己抜去です。手が動く人が自分で抜いちゃったり、
自分で抜かなくても自然に抜けちゃう場合もあります。胃壁が薄くなってしまっている方の場合、胃を少し釣り上げた形で固定すると、自分の胃の重さや水分を摂った際にその重さで胃の壁が裂けてしまうようなことも起こりえます。そうすると、いわゆる胃の中に穴があいたような状況になってしまいチューブが抜けてしまい、胃液や出血が腹腔内にもれ、腹膜炎を起こしてしまいます。こうなるとかなり予後が不良となってしまいます。通常であればお腹の空いたところを閉鎖するために開腹手術をしますが、もともと全身状態が悪いとそこまでできない場合もあります。

あとは瘻孔の周りの炎症がひどくなって壊死を起こしたり、壊死から潰瘍みたいになってしまったりということがあります。もう一つは口腔内のばい菌がチューブを挿入する際に腹壁について感染の原因になったりしますので、手術前の口腔内のクリーン、口腔ケアが重要になってきます。

しばらく経ってからの合併症としては、胃瘻により栄養状態が改善することによって、だんだん腹壁が太って厚くなり、当初の予定よりもバンパー(胃の中のストッパー)が胃の中にくいこんでしまったり、カテーテルが抜けてしまったりということがあります。カテーテルは交換の時に抜けたり、抜けてしまって再挿入したときに瘻孔が壊れて腹腔内にチューブがはいってしまう場合もあります。カテーテルの閉塞や先ほどご説明した結腸を貫いてるケースは交換するまでわからない場合もあり、最初の交換で抜いたときに腸に穴が空いた状況でそのお腹の中に便がもれてしまって初めて気がつくような場合もあります。まわりに胃液がもれて皮膚炎をおこしたり、胃瘻の周囲の肉芽もよくあります。小さいものでしたらそのままでもよいですが、出血が頻繁で量が多いとそこが臭くなったり感染の原因になるので、大きな場合は外科的に手術したり、硝酸銀等で焼いたりします。あとはごく稀に、チューブタイプの場合、バンパーが胃から出て十二指腸のほうに逸脱して閉塞してしまうケースもあります。

前述のとおり、スキントラブルは感染や皮膚潰瘍の原因になります。局所の血流障害が瘻孔の一部に壊死、感染を起こしたり、不良肉芽がスキントラブルの原因となります。基本的な対処方法としては、まず血流の障害があればそれを取り除くことと、なるべく瘻孔の周りを消毒薬じゃなくてもいいので綺麗に洗うことです。このような日頃のケアが大切になってきます。

あとは、なるべく皮膚が乾燥するようにします。多くの施設でティッシュをこよりみたいにして周りに巻きつけて、ちょっとした浸出液を吸収するようにしています。血流障害と感染を起こして膿があったり、感染から一部潰瘍になって白くなったり、不良肉芽があって出血したりするのを防ぐことにつながります。

カテーテルが抜けてしまったら

一番困るのが作ってから1ヶ月以内の、まだ完全に瘻孔ができていない時にカテーテルが抜けてしまう場合です。この場合、穴が空いたまま腹膜炎を起こしたりするので、だいたいは病院に搬送するのがベストだと思います。一方で胃瘻をつくってある程度時間がたってからトンネルができた場合には、そのまま放置しておくと、みなさんもご経験があるかと思いますけども、短時間で結構細くなって同じサイズのカテーテルが入らなくなったりします。

そのため、すぐに病院にいけない場合はなるべく同じぐらいのサイズのチューブか、バンパー式のものであれば、切ってチューブだけにしたものを瘻孔の中に差し込んでもらってテープで抜けないようにするなどの対応が必要です。チューブがない場合は代わりのものを入れたりとか、吸引カテーテルだと一本じゃ細いので、2〜3本を入れておくと、ある程度時間が経ってから病院に行っても再挿入の時にサイズダウンすることを防げます。また、ボタン式の場合は大丈夫なのですが、チューブタイプのカテーテルの場合、詰まりやすい成分のある薬や水に溶けにくいものを胃瘻から注入するときには注意が必要です。

周囲から漏れた場合には、減圧をして投与してもらったり、栄養剤を投与する速度を遅くしたり、座位にしたり、濃度を上げて量を減らすなどの対処が必要になってくると思います。漏れるからとバンパーを締め付けたり、むやみに固定水を増やしたりすると、バルーンタイプのものは裂けて割れちゃったりするので抜去の原因になったりします。あとは安易にカテーテルをサイズアップすると、漏れている原因がわからなくなり危険です。

PEGの交換は、だいたい初回は3ヶ月〜半年後に行います。どうしても入院しないといけない場合と外来でできる場合がありますので胃瘻を作った先生に聞いてみる形になるでしょう。

画像1: カテーテルが抜けてしまったら
画像2: カテーテルが抜けてしまったら

以下の図にあります左側の3つがバンパータイプ、右側の2つがバルーンタイプです。バンパータイプは交換頻度が多くなくてよく、目安4か月とありますが、だいたい半年に1回くらいのところが多いです。バルーンタイプは1ヶ月から2ヶ月と回数が多くなります。ただし、バンパータイプのものは、やはり特別の器具があったり、内視鏡でやらないといけないという制約があり、バンパーが硬いので抜くときに瘻孔を壊したり、患者さんの痛みを伴ったりするのであまり使われることはありません。一方でチューブの形状には、チューブタイプとボタンタイプの2つがあります。

痛みを伴うのか、簡単にできるのか、あとは交換回数が多いか少ないかということで特徴が分かれてきます。また、管理についても時々バルーンタイプのものはちゃんと水が入っているかどうかを1週間か2週間に1度ぐらい確認をしてもらうことが必要になってきます。

これで、4回にわたりケアマネジャーの皆様に開催させていただいたセミナーを終わります。今回は、皆様と貴重な情報交換の機会をいただきありがとうございました。また継続してこのような医療と介護の連携の機会をつくっていければと思います。

構成・文:坂口雄人

【セミナー第1回】医療者とケアマネジャーの連携に必要なこと~在宅医療の現場で共有したい予後予測の知識

【セミナー第2回】医療者とケアマネジャーの連携に必要なこと ~褥瘡の早期発見、早期治療のコツ~

【セミナー第3回】医療者とケアマネジャーの連携に必要なこと ~在宅医療の栄養学~

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