野口由紀子医師インタビュー
(女性のための統合ヘルスクリニック イーク丸の内 院長)

野口由紀子医師は女性専用健診クリニックの院長として日々の業務に携わる傍ら、日本アンガーマネジメント協会でその知識を学び、現在は協会公認のファシリテーターとしての認定を受けています。怒りについて学んだきっかけや、医療職だからこそ知っておきたいアンガーマネジメントのエッセンスを伺いました。

野口由紀子│Yukiko NOGUCHI
高知大学医学部卒業。日本内科学会総合内科専門医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本消化器病学会専門医。女性のための統合ヘルスクリニック イーク丸の内 院長。

『医療現場のアンガーマネジメント活用<前編>』のまとめ
・ アンガーマネジメントは、怒りで後悔しないためのテクニック
・ 怒ったことや、上手く怒れなかったことによる不利益から自分の身を守ることが目的。
・ 病院やクリニックは、怒りが生まれやすい環境である。
・ アンガーマネジメントには、3つのエッセンスがある。

怒りとは、コップから溢れた第二次感情

――野口先生が院長を務める「イーク丸の内」は、スタッフも受診者の方々も全員女性という、女性専用の健診クリニックですね。PMS(月経前症候群)や更年期特有の症状が女性特有のものだからか、男性よりも女性の方がイライラしやすいイメージがあります。実際、女性の方が怒りっぽいのでしょうか?

野口由紀子先生(以下、野口):アンガーマネジメント協会としては、特別に「男性だから、女性だから」と分けて考えることはしていません。また私個人の経験からも、気難しい患者様が男女のどちらかに偏っている感覚はありません。それに昇進に関する話では「男性の方が嫉妬深い」「男の嫉妬は怖いな」と聞きますよね。嫉妬からも、イライラや怒りは生まれますよね。

――そう言われますと、人が怒ったり怒らなかったりには別の理由がありそうですね。では、同じ場所、同じ事象に対しても、怒りによるストレスの感じ方に個人差があるのはなぜでしょうか。

野口:それについては、よく「コップ の水」を例に説明されます。人の感情には第一次感情と第二次感情があります。怒りは第二次感情、怒りの元にある不安や恐怖、焦り等が第一次感情です。

コップの水に置き換えると、心のコップの中に第一次感情である悲しみや寂しさ、つらさ等のお水がぽたぽたと溜まっていきます。コップが第一次感情でいっぱいなると、感情がコップの外に溢れ出てくる。これが第二次感情の「怒り」です。「怒り」は、第一次感情の表現の形なんです。

――なるほど。怒る前に、第一次感情があるんですね。

野口:さらにコップの大きさも、人によって違います。大きくしておくことで感情が溢れにくくなりますし、時々自分のコップの中の水を抜いてあげることも必要です。前回「医療機関には怒っている人が多い気がする」とお話しましたが、病院やクリニックの待合室で患者さんは、体調が悪かったり、気になる症状があったりしてそこにいらっしゃいます。

コップの水が溢れる前に

――第一次感情がたまりやすい人が多い場所なのですね。そのような環境で、医療職のスタッフは、患者さんの怒りにどう対応すればよいのでしょうか?

野口:そのためには相手のコップの中身を知る努力もとても大切です。たとえば「待ち時間が長い」とお怒りになった方がいたとします。その方のコップの中には、体調不良の苦しさ、「すぐに呼ばれないのは何か悪い病気があるからかしら?」という不安、あるいは会社を休んでいらした方は「仕事は大丈夫だろうか」という焦りもあるかもしれません。もちろんお待たせしないのがベストですが、お怒りの方がいた時に、その方の第一次感情を想像し、寄り添うような声かけが大事です。

お怒りになる前に、お待たせしていることを謝罪したり「あと何番目ですよ」等と声をかけるなど、“あなたのことを気にかけています”と伝えたりすることも重要です。また「具合が悪ければ、横になってお休みになりますか?」と、患者様から言われるより先に提案することで、患者様のコップの水を減らすこともできます。

自分の怒り方のタイプを知る

――野口先生は、このクリニックのスタッフを対象に、アンガーマネジメントの研修を行っておられるそうですね。スタッフ向け研修によって、組織を変えたいと思われたのでしょうか?

野口:アンガーマネジメントには、「過去と他人は変えられない。けれど、未来と自分は変えられる」という基本的となる考え方があります。過去と他人は変えられませんので、スタッフにアンガーマネジメントを強要して、組織を変えようという目的はありませんでした。ただ、スタッフ一人一人がアンガーマネジメントの知識を職場で活かし、現場でのストレスに上手く対処できるようになれば、組織の未来も良い方向へ変わりますよね。それが二次的に患者様への対応や提供する医療の質にもプラスに働いてくれれば、とてもうれしく思います。

【ご参考】セミナーに参加した職員の方々の声
「言われてみればたしかに…と気がつける話だけれど、アンガーマネジメントとして筋道を立てて教えてくれたおかげで、行動に移しやすくなった」
「自分で変えられないことにイライラしない。この話は、毎朝の満員の通勤電車で感じるイライラやストレスを避けるのに役立っています」

――最後にもう一つ教えてください。自分のコップを大きくするには、どうしたら良いのでしょうか?

野口:それについてもテクニックは色々ありますが、まずは自分の怒りの傾向を知ることが大切です。道徳的過ぎるとか、攻撃性が強いとか、頻度が高いとか、どういった時に怒りを感じるのかなどを知ることは大切です。アンガーマネジメント協会のWEBサイトでは、無料で簡易版の怒り方タイプ診断もできますから、よければお試しください。私自身も衝動的、怒りを面に出すタイプではありませんが、娘に対してはついつい怒ってしまいます。怒りは、家族や恋人など、身近な人に対してぶつけてしまいやすいと言いますが、それですね(笑)。自分の怒りの傾向を理解して、ポジティブな思考や行動を繰り返すことで、コップの大きさを少しずつ大きくしていきたいですね。

――今回お話を伺う中で、野口先生が、患者さんにも医療者にも、よい環境を提供したいと考えておられることが感じられました。お忙しい中ありがとうございました。

画像: 「無料アンガーマネジメント診断」は、日本アンガーマネジメント協会のサイトにて。※2018年2月現在、メールアドレスの登録が必要です。 www.angermanagement.co.jp

「無料アンガーマネジメント診断」は、日本アンガーマネジメント協会のサイトにて。※2018年2月現在、メールアドレスの登録が必要です。

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取材・文:塚田史香
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