世界の医療を知り、日本の医療をふりかえる

画像: 世界の医療を知り、日本の医療をふりかえる

このシリーズでは、今この瞬間も営まれている世界のさまざまな出来事を、ヘルスケアという視点から紹介します。

世界と聞いて皆さんはどのようなイメージを頭に描かれるでしょうか。海外に出たことがない方にとっては地図や知識の世界が広がることと思います。旅行や滞在の経験がある方は、そこで生活する人たちの顔、街並みや彩り、音や匂いなどを思い出されるかもしれません。その記憶はその時点での真実です。一方で、世界では常に新しいことが起こり状況は変化しています。

このシリーズでは株式会社メディヴァの海外事業部スタッフが、世界で見たり聞いたりした話題に少しだけ自分たちの視点を加えながら、皆さんに世界を肌で感じていただけるよう紹介していきます。皆さんの気持ちが世界に少しでも近づき、皆さんが世界の医療の中へ飛び込むきっかけになってくれたらとてもうれしいです。

日本の公的医療保険制度の特徴

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今回は、 ヘルスケアを語るうえでぜひ確認しておきたい日本の公的医療保険制度の特徴についてお話します。皆さんご存知のとおり日本には国民皆保険制度があります。そして厚生労働省によれば、その特徴は以下の4つで示されます。

①国民全員を公的医療保険で保障。

②医療機関を自由に選べる。(フリーアセス)

③安い医療費で高度な医療。

④社会保険方式を基本としつつ、皆保険を維持するため、公費を投入。

たとえば体調を崩したり、あるいは突然の事故などの怪我により、医師の診察や治療が必要となったとき、皆さんはまずどんなことを頭に思い浮かべますか。

「保険証はどこにしまったっけ?」
「どこの病院に行こうか?」
「どうやって病院に行こうか?」
「お金はいくらくらいかかるだろうか?」

さまざまな心配をしながら病院に行くと思いますが、とにかく病院に行けば何とかなる、という意識をなんとなくお持ちではないでしょうか。

おそらく日本の医療保険制度に加入している限り、保険診療を行っている医療施設であればどこでも診察を受けることができ、必要があれば検査や治療を受け、薬を処方してもらうことができます。

もちろんさまざまな課題を含む現代社会ですので、皆さんすべてがこの限りではないと思いますが、自分の健康を気づかう上で、もし保険加入や持参金が原因で病院の診察が円滑でなかったら、といった絶対的な危機感を持つ人はそれほど多くないでしょう。これが日本の公的医療保険の特徴を反映していると言えます。

ブラジルは?ベトナムは?世界の公的医療保険事情

画像: ブラジルは?ベトナムは?世界の公的医療保険事情

無償で医療を受けられるブラジルの実情

公的医療保険は国によってさまざまで、制度も内容も異なります。たとえばブラジルでは統一保健医療システムが導入され、国民は無償で医療を受けられることになっています。すばらしいシステムに聞こえます。しかし人口2億40万人に対し、認定病院は6100施設。その施設数は公的医療保険をカバーするには充分といえないため、認定施設では多くの受診者が長時間待たされる状態のようです。

医療支出の内訳をみても、日本の公的医療支出の割合が82%であるのに対し、ブラジルの公的医療支出の割合が48.2%に留まっており、この点からもブラジルの公的保険制度の使いにくさが垣間見えます。

公的医療保険の普及を目指すベトナムの課題

現在、弊社でもいくつかの事業にかかわっているベトナムは、公的医療保険制度の普及を目指す国のひとつです。健康保険法により国民の健康保険登録が可能で、その加入率は2012年9月時点で68%を達成。2020年までに80%の保険加入を目指しています。(JETORO)

日本と異なる点として、この健康保険を適用できるのは、登録時に指定した1か所の医療機関で医療をうける場合のみとなります。そのため他の医療機関を受診したいときは、登録した医療機関による紹介が必要で、それが面倒な場合は健康保険に頼ることなく自己負担での診察を選択するケースもあるようです。

世界のどこかで現地の人たちとヘルスケアを語り合うとき、こうした国ごとの制度上の違いを意識して語りかけることで、より深みのある交流が生まれるかもしれません。これからベトナムに行く機会がある方には、甘い練乳入りのコーヒーを片手に路面のカフェでひとときを過ごされることをおすすめします。行き交う人たちに意識を傾けてみるだけでもまた違ったベトナムの姿が見えてくるかもしれません。

画像: 撮影=Asuka KONISHI

撮影=Asuka KONISHI

今回は日本の特徴として、国民皆保険制度を例に出しました。私たち日本人のヘルスケアに対する意識の根底にはこうした制度があるということを確認いただく機会になれば幸いです。

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