神奈川県横浜市青葉区では、医師会などの地域医療機関と在宅医療クリニック、ケアマネジャー等医療関係者が連携して、地域のケアの力を高めていく取り組みが広がっています。前回の「在宅医療の現場で共有したい予後予測」に続き、ケアマネジャー向け医療連携セミナー第2回の内容をお届けします。

今回は「褥瘡の早期発見、早期治療のコツ」について。青葉アーバンクリニックの長瀬医師よりお話がありました。

全4回のセミナーのまとめは、『医療職とケアマネジャーの連携に役立つ医療知識<より良いケアプラン作成のために>』でご覧いただけます。

画像: 全4回のセミナーは、(「【医療者とケアマネの連携に役立つ医療知識】より良いケアプラン作成のためのセミナー概要」)[ http://hiroba.plata-med.com/_ct/17010503] にてご覧いただけます。

全4回のセミナーは、(「【医療者とケアマネの連携に役立つ医療知識】より良いケアプラン作成のためのセミナー概要」)[http://hiroba.plata-med.com/_ct/17010503]にてご覧いただけます。

長瀬 健彦|Takehiko NAGASE
聖マリアンナ医科大学を卒業後、聖マリアンナ医科大学病院、日本医科大学病院高度救命救急センター、聖隷浜松病院等を経て医療法人社団プラタナスに入職。平成27年4月に青葉アーバンクリニック院長に就任。地域とのつながりを大切にしたクリニックを目指し、青葉区全域で在宅医療に取り組んでいる。

褥瘡の早期発見、早期治療のコツ

長瀬先生)青葉アーバンクリニックの長瀬と申します。もともと形成外科医を20年以上やっていたのですが、以前いた病院で在宅に携わるようになりました。それから昨年4月に青葉アーバンクリニックを開設して今にいたります。
今日は、前回に引き続き、ケアマネジャーの皆様に知っておいていただくと役立つ知識として、褥瘡についてお伝えしていきたいと思います。では早速ですが、そもそも「褥瘡」とはどのような状態を言うのでしょうか。

褥瘡学会では、次のように定義しています。

「身体に加わった外力が骨と皮膚表層の間の軟部組織の血流を低下あるいは停止させ、この状況が一定期間持続され、組織が不可逆的な阻血性障害に陥ること」

簡単に言いますと、褥瘡とは「床ずれ」のことですね。床ずれにはみなさんなったことはないとは思いますが、靴ずれならあるのではないでしょうか。靴ずれも大きな枠組の中では褥瘡の一つと言えます。概念としては外からの力があたり、それが軟部組織の血流を阻害して不可逆的に、つまり元に戻らない状態になったということを言います。こちらの写真をご覧ください。

(出典:高橋誠ら:圧・ずれ力が橈骨動脈と皮膚毛細血管の血流量に与える影響)

左の写真は皮膚の構造を簡単に書いた組織図ですが、真皮の中を血管が走っています。赤いのが動脈で、青いのが静脈です。右の図は超音波の映像です。白い丸の書いてあるところが動脈です。通常は図にあるくらいの大きさなのですが、75mmHg、これは最低血圧よりちょっと高いくらいの圧力をかけただけでもこのようにつぶれてしまいます。静脈の場合はもっとそうです。具体的にいうと32mmHgくらいの圧力で血の巡りが悪くなり、2時間あれば褥瘡は出来上がってしまいます。ですから本当にちょっとした気の緩みで褥瘡につながってしまうと言えるんですね。

何が一番よいかは状況判断しながら決めていく

よくケアマネジャーさんにお話を聞くと、ご家族へ褥瘡ができてしまった時の説明に悩まれるとのことですが、このように褥瘡はちょっとしたことで起きてしまいます。そういう意味ではある程度は仕方ないとも言えますが、まずは後ほど紹介します危険因子を知って、適切に予防することが大事です。それと同時に、一度なってしまったら改善のためにはいくつか手段があって、それを根気強くやっていくことが大事になります。一緒にがんばっていきましょうというスタンスをお伝えすることです。

私ども医師は、治療をするにあたって、ご家族の介護力とか処置の能力も考えながらやっています。たとえば早く治そうということであれば手術療法もありますし、少しポケットを切開するという方法もあります。ですが、ポケットを切開すると傷は当然ながら大きくなり、処置が大変になる場合もあるので、やはりご家族と話をし、どのあたりをゴールにしてゆくのがよいか状況判断していくことになります。何が一番よいかということはケアマネジャーのみなさん、訪問看護、医師と連携しながら決めていくことが大事になってくると思います。

褥瘡の危険因子とチェック方法について

褥瘡の治療には根気が必要です。一度出来てしまうと治してゆくのにどうしても時間がかかることが多くなります。そのためまずは予防が大切です。徹底的に予防していくんです。予防するためにはもちろん身体の状態、それから疑わしい褥瘡の兆候、ちょっと赤いなとか、赤みが引かないな、少し水ぶくれができているなという状態の時に訪問看護なり訪問診療につなげていただき早めに的確な治療をすることができるとよいでしょう。
以下に褥瘡の危険因子チェック方法をご紹介します。よく使われるチェック方法にはブレーデンスケールやOHスケールなどがありますので、これらを知っていただき、予防に役立てていただければと思います。

【ブレーデンスケールによる褥瘡危険因子のチェック表】
介護力の違いにより病院では14点、施設・在宅では17点が褥瘡発生の危険点とされている。
(出典:©Braden and Bergstorm.1988 訳:真田弘美/大岡みち子)

【OHスケールによる褥瘡危険要因のチェック表】
(出典:神崎株式会社HP http://www.scrio.co.jp/fukusi_yougu/yougu_post-10.html

【OHスケールの合計点とマットレスの目やす表】
(出典:神崎株式会社HP http://www.scrio.co.jp/fukusi_yougu/yougu_post-10.html

褥瘡になった時の対処法

ここからは、残念ながら褥瘡ができてしまった時の対処法についてご紹介します。褥瘡ができてしまったら、まずはその状態を正確に把握することが大事です。評価には代表的なアセスメント法が2つあります。一つはDESIGN、もう一つはNPUAP分類というものです。

【DESIGNとNPUAPの褥瘡のステージ分類対照表】
(出典:日本褥瘡学会編.褥瘡予防・管理ガイドライン.照林社.2009)

繰り返しになりますが、褥瘡が一度できたらなかなか治らないのが当たり前です。広がらないように食い止めているだけでも治療の成果が出ているとも言えます。ですが、やっぱり治してあげたいですよね。その場合どうすればいいのでしょう。
治療を進める際には、まず、褥瘡の発生原因を徹底して除去することが極めて重要になってきます。これを怠ると、たとえ適切な治療を行おうとも褥瘡の改善は望めないということがあります。褥瘡の状態が把握できれば、感染や創治癒遅延の原因となっている壊死組織を除去し、創面を清浄化するデブリドマンという処置を行ってゆくことになります。

感染が原因の場合の治療に関しては賛否両論ありますが、洗浄・消毒・外用剤を状態に応じ使い分けることでしっかり効果を出すことができると考えています。外用剤選択の基本は、「損傷の状態・深度」と「浸出液の有無とその量」です。肉芽形成・表皮化に関してもなかなか治癒しないときの基本は同じで栄養不足、酸素不足、環境、圧迫、そもそも何らかの病気に罹患している可能性など考えられる原因を特定してゆき、それに応じて改善していくことになります。

このように、治療の要は悪化要因の徹底的な除去と、あとは局所の水分コントロールということになってきます。具体的な治療は医師や看護師と連携をとっていただくことになるかと思いますので、一緒に取り組んでゆけたらと思います。本日はありがとうございました。

構成・文:坂口雄人

【セミナー第3回】は「医療者とケアマネジャーの連携に必要なこと ~在宅医療の栄養学~」です。

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