イーク表参道副院長 高尾美穂医師

丸の内と表参道。日本のビジネス、ファッションの発信地であるこの地域に、働く女性のための人間ドックを展開しているクリニックがあります。完全に女性のみを対象としたユニークなクリニックであるイークは設立から今年でちょうど10年。女性に特化するというコンセプトの裏側にはどんな思いがあるのかを取材しました。

健康寿命を延ばすという考え方

健康寿命という言葉が近年注目されるようになってきました。この言葉は「健康上の問題がない状態で日常生活を送れる」期間のことですが、健康寿命を延ばすためには病気を未然に予防したり、早期発見することが大切になってきます。
日本ではまだまだ医療機関といえば、病気を治療するために行くというイメージが強いですね。でも、病気の予防、そして早期発見も大事な役割としてあるということを知っていただきたいと思っています。

近年の日本人の死因率上位である悪性新生物、心疾患、脳血管疾患などの疾病はもちろん、一般的に生活習慣病といわれる糖尿病、慢性肝疾患などもまた、症状が悪化するにつれて治療が困難になることがわかっています。そのため、いかに早期に病気の兆候をつかみ生活を改善するか。そして病気になる前にいかに予防するのかということがとても大事なのです。

こう話すのは、2号院となるイーク表参道で、副院長を務める高尾医師。高尾医師は婦人科医として日々の診療に携わりつつ、診療後や休日を利用してセミナーやイベントを数多く開催し、年齢に応じた女性のからだの変化とケアの考え方について啓蒙しています。

画像: 健康寿命を延ばすという考え方

高尾美穂|Miho TAKAO
女性専用クリニック[イーク表参道]副院長。日本産科婦人科学会専門医。日本医師会認定産業医。日本医師会認定健康スポーツ医。日本抗加齢医学会専門医。日本臨床スポーツ医学会員。日本体育協会 公認スポーツドクター。愛知医科大学医学卒業、東京慈恵会医科大学大学院修了。IYCアシュタンガヨガプライマリーシリーズティーチャーズトレーニング修了。日本マタニティヨーガ協会マタニティヨーガ指導者。株式会社ドーム(アンダーアーマー)アドバイザリードクターも務める。

女性のライフデザインを支援する

——人間ドックや生活習慣病検診など、いわゆる健康診断に取り組む医療機関は年々増加傾向にあります。その中でもイークの特徴はなんといっても女性のみを対象としていることだと思いますが、どんなメリットがあるのでしょうか。

高尾:それは、やはり思い切ったサービスができることだと考えています。

たとえばイークは、クリニックのスタッフがすべて女性のみで行っています。また、女性に居心地よく健康診断を受診していただくという視点で設備、接遇、サービス等を一貫して準備することができるので、他にはない居心地のよい検診が受けられると受診者から好評をいただいています。

リラックスしていただけるようにアロマを焚いたり、冷え対策としてソックスやタオルなどをご用意したりと細やかな配慮ができるよう日々改善を積み重ねているんですよ。

——健康診断はつい足が遠のいてしまうものだからこそ、快適に受けられるのはうれしいですね。

高尾:最近は他の医療機関でも、女性専用フロアや女性専用デーを設けているところも珍しくなくなってきました。これだけ普及してきているのはやはり、女性専用というサービスが、これまでの健康診断の中で女性が抱いていたニーズに応えるものだったからだと思います。

更には女性が年齢に応じた自らのからだの変化を知り、主体的に自身の健康と向き合っていただく機会をつくることができれば、ご自身のキャリアを上手にマネジメントしていくことにつながってきます。健康面からそのサポートをしていく役割を担っていきたい
と考えています。

——なぜ健康と向き合うことがキャリアのマネジメントにつながるのでしょうか。

高尾:乳がんや婦人科系の病気など、比較的若いころから注意すべきリスクに対処するということ。また、仕事、育児、介護など多くの役割をこなす女性はライフイベントに合わせてキャリアの変化の影響を受けやすいものです。女性には年齢に応じて男性とはまったく違うからだの変化があるため、予測される年齢に応じたからだの変化を知り、これらライフイベントにあらかじめ備えることが
キャリアのマネジメントにつながるのです。

画像: 女性のライフデザインを支援する

女性ホルモンの3つの役割とは

——では女性は、健康に関するどのようなことを知っておくべきでしょうか。

高尾:まず、女性ホルモンの役割について基本的な知識を持っていただくことをお勧めします。女性のからだの変化にとって、女性ホルモン(エストロゲン)の影響は大きいからです。

女性ホルモンであるエストロゲンには、大きく3つの役割があります。

一つは、排卵を起こす役割。妊娠するためには排卵が起こらないといけませんが、それにはエストロゲンがないとできません。

二つ目は、お肌がきれいであるとか、髪の毛がつややかであるとか、女性らしい綺麗さを保つ役割。これもエストロゲンの働きが関係しています。女性は閉経するとエストロゲンがなくなってしまうのですが、実は閉経前にも一度、エストロゲンがなくなる時期というのがあります。それが産後です。

産後のお母さんたちが髪の毛が抜けるとか、お肌がかさかさになるというのは、妊娠中にたくさん出ていたエストロゲンが産後しばらくはなくなってしまうことが原因です。一時的に更年期と同じような症状が出てしまう時期が産後というわけです。

三つ目にコレステロールの値を下げる役割があります。エストロゲンをつくるためには、脂肪細胞から生成されるコレステロールが必要とされることから、エストロゲンがつくられている間は、間接的にコレステロールの値が下がってくれるのです。コレステロール値が高くなりすぎると血管の弾力性を下げ、動脈硬化や心血管疾患といわれる心筋梗塞や大動脈解離といった深刻な疾病につながります。

女性はエストロゲンがなくなる更年期を境に、その前後で病気のリスクが大きく変わり始めます。女性ホルモンが出る間、女性はこのような病気のリスクを低く抑えられるというギフトをもらっているともいえます。

——エストロゲンって、大事ですね。

取材・文:坂口雄人

高尾美穂先生へのインタビューは、第2回へ続きます。

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